脊髄の良性腫瘍

脊柱は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨などの椎骨が連結したものです 。この椎骨の後ろには椎孔があり、それぞれの椎孔は全脊柱を通じて1つの管を形成しています。これを脊柱管といいます。このなかに髄膜におおわれて脳・延髄からの延長である脊髄があります。

この脊髄は腰椎部で馬尾と呼ばれる神経に名前を変えます。この脊髄と馬尾から左右へ多数の脊髄神経根が分かれて、これらが躯幹、四肢の筋肉の運動や感覚を支配しています。

脊髄腫瘍とは、脊髄そのものから発生する腫瘍(髄内腫瘍)だけでなく、脊柱管のな かで髄膜の外に発生する硬膜外腫瘍と、硬膜の内側に発生する硬膜内髄外腫瘍も含まれます。

硬膜外腫瘍は肺、前立腺、乳腺、消化管などの悪性腫瘍が転移して脊柱管内に広がったものが多いのですが、悪性腫瘍の髄内への転移はめったにみられません。この転移性のものを除くと、大部分は硬膜内髄外腫瘍で、これはほとんどが良性のものです。

症状・診断

初期の症状は、その腫瘍の発生した部位での神経根の刺激や圧迫による頸腕痛、肋間神経痛、腰痛、坐骨神経痛などの痛みです。そのうちにしびれ感や知覚異常、下肢の重苦しさや脱力感が出現します。腫瘍が増大して脊髄が圧迫されるようになると、知覚障害、運動麻痺はさらに進行し、排尿困難、尿失禁も出現します。 不快な痛みと、知覚症状・運動障害に改善傾向がみられない場合、脊髄圧迫の可能性があります。

しかし、脊髄炎、椎間板ヘルニアなど類似の症状を現わす疾患はほかにも多いので、鑑別診断が必要です。診断の決め手はMRI(磁気共鳴映像法)検査やCT(コン ピュータ断層撮影)検査、脊髄造影が有用です。

治療

良性腫瘍は、手術的に摘出すれば著明な治療効果が期待できるので、早期に治療するとよいでしょう。ところが脊髄というのは、緩徐な圧迫には予想以上に抵抗力があって、初期には症状がはっきりしません。そこで、何回も病院をかえる人がいます。そうなると、症状の進行がつかみにくくなり、診断が遅れがちになります。