腰の痛みは内科的な病気、たとえば肝臓、胃、腎臓、膵臓、脾臓などの重大な病気のときもありますから、整形外科領域の病気でないときは、内科でくわしい検査を受けることが必要です。ここでは、整形外科に関係する腰の痛みについて述べます。
20歳代から30歳代のはたらき盛りの人で、運動時に腰部が痛むため、検査をしてみても異常所見のないものがあります。また、長い時間立ち仕事をしたり、腰かけているなど、同じ姿勢をつづけていると腰が痛くなることがあります。これは、筋肉の力が弱かったり、過労によるものが多く、むしろ運動療法で、積極的に筋力を増すように努めることが大切です。
重い荷物を急にもち上げたり、からだをねじったりしたとき、激痛とともに腰が動かなくなることがあります。これは一種の腰部捻挫で、筋肉や筋膜の肉ばなれや炎症によるもので、いわゆるギックリ腰といっています。立てなくて、はうのがやっとのようなときでも、下肢に痛みや知覚異常がないときはとくに心配なものではありません。痛みが強く、治りが遅いときは、ほかの病気をおこしていることがありますから、くわしい検査を受けることが必要です。
20~30歳代のはたらき盛りの人に多くみられるものに、椎間板ヘルニアによる腰の痛みがあります。腰のまわり、あるいはお尻の筋肉を押さえると痛くて、立った姿勢で首を前に曲げると、痛みが足のほうに放散し、腰を動かしたり、せきやくしゃみなどでも下肢に痛みが伝わります。膝の関節をのばしたままで下肢をもち上げると、下肢と腰の痛みが増してとびあがるほどのこともあります。自分のいちばんらくな姿勢で、2~3日安静にしていれば、ほとんどの場合は、痛みが多少軽くなります。が、下肢が上がらない、下腿から足指にかけて感じがにぶい、足指の力が弱い、腰痛が強いといった症状が3か月くらいつづくときは、整形外科でくわしく調べることが必要です。
最近は、腰が痛いとすぐヘルニアではないかと考えがちですが、手術をしなければならないような腰椎椎間板ヘルニアはそれほど多いものではありません。