腰の痛みは内科的な病気、たとえば肝臓、胃、腎臓、膵臓、脾臓などの重大な病気のときもありますから、整形外科領域の病気でないときは、内科でくわしい検査を受けることが必要です。ここでは、整形外科に関係する腰の痛みについて述べます。
なお、50歳以上の人で、10分くらい歩くと下肢が痛くてしびれたり、そのまま立って休んだり、しゃがむと治るとき、脊椎管の狭窄と動脈硬化による場合がありますが、椎間板ヘルニアの場合は、そういうときに立って休んだだけでは治りません。腰かけたり、し ゃがんだりしますと痛みが多少軽くなりますが、かんたんにはよくなりません。
50歳前後になりますと、加齢による変化がはっきりしてきて、さらに年をとると骨が硬く、もろくなります。そして、腰の動きもわるくなって、立ったり歩いたりすると、腰の痛みとともに、ふくらはぎから足まで痛んだり、しびれたりするようになります。しばらく動いていると、痛みは軽くなりますが、疲れるとまた痛むようになります。このような状態を変形性脊椎症といい、エックス線写真をとってみると、骨が硬くなっていて、とげ のようなものができています。
そのほか、中年後の男性に多く、腰痛や下肢が重だるい、冷える、しびれる、そして10分~20分ぐらい歩くと、足をひきずるようになる、少し休むとまた歩けるようになる病気に脊柱管狭窄症(脊椎管狭窄症)があります。高齢化によりひじょうに多くなっています。女性にも、この病気がみられます。動脈の循環がわるくなる病気との区別が大切です。加齢などが原因といわれています。
腰痛のときエックス線写真をとってみますと、一部分の骨が離れているところがあり、脊椎分離症が発見されることがあります。この病気は、日ごろ腰部が重くて疲れやすい、ふくらはぎのところがいつもだるい感じがします。めずらしい病気ではありません。しかし、分離症そのものがつねに痛みをおこすとはかぎらず、症状がなければほうっておいても心配いりません。原因は、小・中学生のころの運動が過ぎたためか、生まれつきのものか、はっきりしていません。ただし、分離部が前方へすべりだすと脊椎すべり症になります。このすべり方が強いときには、神経を刺激して、腰の痛みや、足のほうへ響く痛みが強くなります。
閉経期後の女性で多いのは、骨粗鬆症で、痛みだけでなく、上部腰椎の圧迫骨折をよくおこします。骨粗鬆症では、骨がもろくなっているため、ちょっとしたことで骨折をおこしやすくなります。
そのほか、腰部の脊髄腫瘍では大きくなるにつれ、腰をしめつける痛みと、下肢の症状がでます。強直性脊椎炎(膠原病・骨と関節)では強い腰痛があり、限局性癒着性脊髄膜炎でも腰の痛みをともない、つっぱるような歩き方になります。