腰痛といっても、その姿は多種多様です。腰部の鈍痛、放散痛、電撃痛などの痛みや、腰を動かしたときの痛みや安静時の痛みなどさまざまです。
また部位的には、坐骨神経痛といわれる殿部痛、大腿部痛、下肢痛をともなうことも あります。つまり腰椎やその周辺になんらかの異常が発生して、神経が刺激されて生ずる痛みが腰痛や坐骨神経痛ですが、これはいろいろな病気の症状であって、決して病気の名前ではありません。
腰痛をおこす原因はたくさんあります。むかしはこれらの原因をはっきりつかめないままに、腰が痛ければ、すべて腰痛症という症状名でかたづけていたのです。近年、研究が進むにつれ、原因を明らかにできない腰痛はしだいに少なくなり、原因がわかりしだい、正確な病名がつけられています。しかし、それでもなお、原因のつかめない腰痛は10パーセント前後あるようです。次に日常多くみる腰痛を訴える病気にはどんなものがあるのか、腰痛の発生する年齢との関係からみてみましょう。
青年期、壮年期にかけての腰痛
男性老年期の腰背痛
女性老年期の腰背痛
そのほか腰痛を訴える病気
●生活上の注意
ほとんどの脊椎動物は脊椎を水平にして4本の足で歩いています。 しかし、ヒトは4本の足で歩いていた時代から、長い間にさまざまに変化しながら発達し、起立位で歩くようになりました。そこで腰椎は重い頭やからだを支えていることになり、4本の足で移動していた時代の腰椎部の後方凸のカーブ(腰椎後弯)がなくなり、頸部は前方へ、胸部は後方へ、 腰部は腹部を突き出した前方への弯曲(腰椎前弯)がとられるようになりました 。
このような形態変化によって、ヒトのからだのバランスがわるくなり、腰の疲労や痛 みをおこしやすくなってきたわけです。そのうえ、寝ている状態では腰部には約20キ ロの力が加わっており、起立姿勢では100キロが、腰を曲げて20キロのものをもち上げると約225キロもの力が加わるという報告もみられます 。
また、下部腰椎は、筋肉のはたらきのみで、あらゆる方向に運動できる腰椎と、固定されている骨盤との間にあるため、不自然な姿勢や動作をすると損傷を受けやすくなっています。そこで、内科や産婦人科、泌尿器科の病気や腫瘍、カリエスなどでおこる腰痛以外の腰痛をおこさないためには、腰部の正しい姿勢を保ち、それに耐える筋力を保つことが必要になってくるわけです。かぜ、胃腸病や肝臓病など内科の病気や妊娠、子宮筋腫、子宮がんや尿管結石などは、腰痛のほかにも何か別の症状や 血液検査の異常がみられることが多いものです。
姿勢による腰痛予防
- まず第1に日常の姿勢や動作で、腰をそらさないように注意することが大切です。 立つ姿勢ではお腹を突き出さないこと。腹筋を緊張させてお腹をかるく引き締めた姿勢がよいのです。これには強い腹筋力が必要となります。肥満はつねにお腹を突き出したわるい姿勢の誘因になり、腰痛の原因になるのです。
- 立ちつづけるときは、片足を何か適当な台にのせると、腰のそりは除くことができます。
- 座る姿勢では、いすの高さに注意が必要です。高すぎると腰がそります。
- 逆に低いいすは、腰の曲がりを強制して腰の疲労をおこすため、長時間つづけることはさけるべきです。いすは、それぞれの体格に合ったものを使うようにしましょう。また、柔らかすぎるソファに座ったり、あぐらをかくのも腰が疲れます。
- 寝る姿勢も大切です。はらばいや高いまくらは腰がそった姿勢をつづけることに なり、わるい姿勢で立ち、お腹を突き出した状態と同じです。あおむけで、膝の下にま るめた毛布をはさんで膝を曲げるか、横向きで膝を曲げて寝ると腰のそりはとれ、腰痛を防ぐことになります。柔らかいマットレスは寝返りをうちにくく、また腰が沈みこみ 腰のそりを強くしてしまうため、腰痛の原因になります。また、高いまくらは首や腕、肩 などに無理をかけます。
- 日常の動作でも、ものを拾ったり運んだりするときの腰の使い方には注意が必要 です。重いものをもち上げるときはしゃがみこみ、そして、膝をのばしてもち上げることで、腰への負担が軽くなります。軽いものを拾うときも、同じ注意が必要です。ものを運ぶときには、からだに近づけてものをもつ、また、バランスよく両手にものをもつことが大切です。
腰痛を予防し、痛みを軽くする体操
- この体操の目的は2つあります。1つはからだを支え、動かすための腹筋と背筋の筋力を強くすることです。この筋力強化体操は、脊柱の構造への負担を少なくし、筋肉のバランスをととのえ腰痛をおこしにくい、正しい姿勢を身につけることにも役立ちます。いわば強い筋肉は自然のコルセットなのです。もう1つは、筋肉や靱帯や関節の柔軟性を保つことです。これは適度の運動によって血液の循環をよくし、若さを保つことにも役立ちます。 腰痛の体操療法は体操療法の基本的なものです。
●共通の症状・応急手当
腰痛は、突然のはげしい腰痛や、それに下肢まではげしい痛みが放散する坐骨神経痛で身動きできないような急性腰痛と、急性期を過ぎて軽減した腰痛が残存しているものや、はじめから徐徐に生じた腰痛を訴えつづける慢性腰痛とに分けられます。たとえば椎間板ヘルニアなどは急性腰痛の形で始まり、しだ いに慢性腰痛に移行することもありますし、老人性変形性脊椎症などでははじめから、 慢性腰痛のかたちをとるものです。一般に急性腰痛は、あわてて病院に行っても原因を明確にできないことが多いものです。下肢の知覚麻痺、運動麻痺などがみられないときには、自宅でもっともらくな姿勢(多くの場合側臥位でえびのような姿勢)で寝てい ることです。たいていは数日から1週間で軽くなります。それから、医師の治療を受けても遅くはありません。
慢性腰痛では日常生活上の姿勢、動作の注意を守り、適当な体操療法をつづけることが大切です。それでも徐々に痛みが増してくるような場合は、化膿や腫瘍などの心配があるので、医師の治療を受けましょう。
腰痛、下肢痛は、かならずしも腰椎部だけに原因があっておこるとはかぎらず、胸椎 部あるいは頸椎部の脊髄腫瘍や頸椎、胸椎の変形疾患でも自覚することがあります。